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半径、W(g/m3)は霧水量である。Weickmann等の改良公式は霧粒の半径の分布幅が狭ければ次のようになる。

V=2.6r/W

これらの公式はいずれも霧粒の半径rを含んでいるので実用的ではない。

NASAのハンドブック(7)には、レーダー観測に適した、霧粒の半径rを除いた次の式を載せている(この式はEldridge(8)による)。

V=0.024W −0.65

この式から霧水量W(レーダー反射因子Z)すなわち霧エコーの受信電力を測定できれば、二次元の視程をリアルタイムで推定できることになる。

 

海の霧を観測するためには、海岸の小高い位置に低速で回転(回転式のレーマークビーコンの程度)するアンテナを置き、アンテナビームを水平に向け、観測距離範囲内でレーダービームが海面を叩かないようにし、海面反射を避ける必要がある。ウインド・シア測定用のレーダーアンテナに見られるような仰角方向にアンテナを振る機構等は不要である。また、船舶等のエコーは信号処理により除去することになる。ただし、当然ながら降水粒子が存在するような条件下では霧の観測は困難になる。

 

霧は発生原因別に次のように区分できる(6)。

A.放射霧:夜間の放射冷却

B.移流霧:冷たい海面上に暖かい湿った空気が流れ込み発生

C.蒸気霧:暖かい海面上に寒冷な空気が流れてきて発生

D.前線霧:前線付近に発生

現に発生している海霧の成因は、二次元的な局地的気象要素の観測と、総観的な気象データ(地上天気図、高層天気図)の解析からおおよその見当はつくので、前に述べたようなミリ波による霧観測レーダーが実用化できれば、ミリ波レーダーのデータと組み合わせることにより、霧の範囲、予想持続時間等、船舶関係者に有効な情報を提供できる可能性が大きい。

 

海面上の霧観測については、制約はあるがここに述べた方策は検討に値する。ただし、雲を観測するレーダーは、気象研究所と名古屋大学で使用された実績があるが(いずれも沖電気工業製の8.6mm波レーダー)、海霧については、実績のあるシステムはまだ無いので実用化のための開発・研究が必要になるが検討に値するシステムである。また、最初に述べた光の透過、散乱を利用する光学的視程計は、海面上を広範囲(2次元的に)に観測する目的には不適当である。ミリ波レーダーにも問題が多いが、完璧な機材は望めない以上、次善の策としてミリ波レーダーは有望と考えられる。

 

 

 

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